新宿・飯田橋のカウンセリングルームNY心理のブログ

「不確実な時代」に生きるー曖昧な喪失感

コロナ渦一色で明け暮れた日々が嘘のように、世の中が少しずつ変わり人々が徐々に時代の流れの中に適応していこうとしています。世界中で平和が叫ばれているにも関わらず、戦争はまだ終結のめども立っておりません。暗い話は身近なところにもありますね。 本来であれば、人々から信頼され尊敬の念を持って見られていたはずの、金儲けを目的としない職業の方々、たとえば教師、警察官や政治家?によるとんでもない裏切り行為でがっかりさせられる事もあるかもしれませんね。また、本当にいざとなったら頼りになるだろうと思っていた家族の言動が、思いのほか冷たかった時など。いずれもハッキリとは目には見えないものですが、心の中には漠然とあると信じていたものが崩れた時、私たち心の一番深い所がざわつき始め、どうしようもない失意とあきらめ、そして不安感の中に突き落とされてしまいます。

米国ミネソタ大学の名誉教授である社会心理学者Pauline Bossは、著書 Loss,Trauma, and Resilience-Therapeutic Work with Ambiguous Loss (2006)の中で「あいまいな喪失」(Ambiguous loss)喪失した確証のない不確実な状態が、いかにストレスであるかという理論を提唱しています。 つまり「あいまいな喪失」とは、心理的に存在しているが身体的に存在しない「さよならのない別れ」や 肉体はあっても心理的に失われた「別れのないさよなら」などがあり、目に見える存在との別れと同様、或いはむしろもっと複雑で解決方法が難しいというのです。
「あいまいな喪失感」に含まれるものとしては、例えば、親の離婚で親子がばらばらになるような時、認知症や脳の外傷、アルコール依存症などで、その人らしさや記憶が失われていき、「そこにいるけれど、いない状態」も「あいまいな喪失」になるとしています。

あいまいな喪失については、解決をつけるというよりは、その問題に耐える力をつけていくことが大事だと言われています。「レジリエンス(復元力・回復力)」と言われていますが、その人が本来持っている力を高めていくことで、あいまいな喪失に向き合っていくという事が出来ます。

NY心理では、「あいまいな喪失感」を抱えていらっしゃる方に、ゆっくりと寄り添いたいと思います。その人たちなりのレジリエンスで、あいまいさを持ちつつ、より豊かな人生を送っていけるよう、ずっと心を寄せていくことが大切だと思っています

最後まで読んでくださった皆様の、今日のお疲れが取れますように。
また、ご縁がありますように。

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